法令上の制限 実戦篇

建築基準法の過去問アーカイブス 平成15年・問21 用途制限に関する総合問題


建築基準法に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(平成15年・問21)

1.「市町村は地区計画の地区整備計画が定められている区域内において,条例で,建築基準法第48条の建築物の用途制限を強化又は緩和することができる。」

2.「建築協定においては,建築協定区域内における建築物の用途に関する基準を定めることができない。

3.「都市計画区域及び準都市計画区域以外の区域内において,地方公共団体は,建築物の用途に関する制限を条例で定めることはできない。」

4.「第一種低層住居専用地域において建築することができる用途の建築物については,第二種低層住居専用地域においても建築することができる。」

【正解】

×

1.「市町村は地区計画の地区整備計画が定められている区域内において,条例で,建築基準法第48条の建築物の用途制限を強化又は緩和することができる。」

【正解:

◆条例による用途制限の強化と緩和

 市町村は地区計画等の区域〔地区整備計画等が定められている区域に限る〕内において,建築物の敷地構造建築設備又は用途に関する事項で当該地区計画等の内容として定められたものを,条例で,これらに関する制限として定めることができます。(建築基準法・68条の2第1項)

 また,市町村は,必要と認める場合は,国土交通大臣の承認を得て,条例で,建築基準法第48条の規定による建築物の用途制限を緩和することができます。(建築基準法・68条の2第5項)

 したがって,<市町村は地区計画の地区整備計画が定められている区域内において,条例で,建築基準法第48条の建築物の用途制限を強化又は緩和することができる>とする本肢は正しい記述です。

地区計画は,平成16年3月末時点で,全国で4,200地区が定められています。

●市町村の条例に基づく制限
(市町村の条例に基づく制限)
第68条の2  市町村は、地区計画等の区域
(地区整備計画、特定建築物地区整備計画、防災街区整備地区整備計画、歴史的風致維持向上地区計画沿道地区整備計画又は集落地区整備計画(以下「地区整備計画等」という。)が定められている区域に限る。)内において、建築物の敷地、構造、建築設備又は用途に関する事項で当該地区計画等の内容として定められたものを、条例で、これらに関する制限として定めることができる。

2  前項の規定による制限は、建築物の利用上の必要性、当該区域内における土地利用の状況等を考慮し、地区計画、防災街区整備地区計画又は沿道地区計画の区域にあつては適正な都市機能と健全な都市環境を確保するため、集落地区計画の区域にあつては当該集落地区計画の区域の特性にふさわしい良好な居住環境の確保と適正な土地利用を図るため、それぞれ合理的に必要と認められる限度において、同項に規定する事項のうち特に重要な事項につき、政令で定める基準に従い、行うものとする。

5  市町村は、用途地域における用途の制限を補完し、当該地区計画等(集落地区計画を除く。)の区域の特性にふさわしい土地利用の増進等の目的を達成するため必要と認める場合においては、国土交通大臣の承認を得て、第一項の規定に基づく条例で、第48条第1項から第12項までの規定による制限を緩和することができる

2.「建築協定においては,建築協定区域内における建築物の用途に関する基準を定めることができない。

【正解:×

◆建築協定

 市町村〔東京都内の特別区〕は,その区域の一部について,住宅地としての環境又は商店街としての利便を高度に維持増進する等建築物の利用を増進し,かつ,土地の環境を改善するために必要と認める場合には,土地の所有者及び借地権を有する者(「土地の所有者等」)が当該土地について一定の区域を定め,その区域内における建築物の敷地,位置,構造,用途,形態,意匠又は建築設備に関する基準についての協定(「建築協定」)を締結することができる旨を,条例で,定めることができます。 (建築基準法・69条)

 したがって,<建築協定区域内における建築物の用途に関する基準を定めることができない>とする本肢は誤りの記述です。

建築協定は,平成16年3月末時点で,全国で約4,500件締結されています。

●建築協定の成立・変更・廃止
 建築協定はどの市区町村,また市区町村内のどの区域でも締結できるというものではないことに注意してください。

 建築協定が成立するためには,まず前提として,市町村・都の特別区がその区域の一部について建築協定を締結できる旨を定めた条例を制定している必要があります。つまり,条例で定めていない市区町村や区域では建築協定の規定は適用されないということです。(建築基準法・69条,70条1項)

 その区域の土地の所有者・建築物の所有を目的とした借地権者〔借地権の対象になっている土地では,借地権者の合意があればよい。〕の全員の合意で協定書を作成し,特定行政庁の認可を受けた上で,建築協定は成立します。(建築基準法・70条1項)

●成立・変更・廃止の要件
 成立  土地の所有者・借地権者全員の合意+特定行政庁の認可
 変更  土地の所有者・借地権者全員の合意+特定行政庁の認可

 (期間の延長も,全員の合意が必要。)

 廃止  土地の所有者・借地権者の過半数の合意+特定行政庁の認可

3.「都市計画区域及び準都市計画区域以外の区域内において,地方公共団体は,建築物の用途に関する制限を条例で定めることはできない。」

【正解:平成8年・問24・肢1,平成15年・問21・肢3,

◆都市計画区域及び準都市計画区域以外の区域内の建築物に係る制限

 都市計画区域及び準都市計画区域以外の区域内であっても,都道府県知事が関係市町村の意見を聴いて指定する区域内では,地方公共団体は,当該区域内における土地利用の状況等を考慮し,適正かつ合理的な土地利用を図るため必要と認めるときは,政令で定める基準に従い,条例で,建築物又はその敷地と道路との関係建築物の容積率,建ぺい率,建築物の高さその他の建築物の敷地又は構造に関して必要な制限を定めることができます。 (建築基準法・68条の9)

 したがって,都道府県知事が関係市町村の意見を聴いて指定する区域内であっても,地方公共団体は,建築物の用途に関する制限を条例で定めることはできないので本肢は正しい記述です。

 都市計画区域及び
 準都市計画区域
 以外の区域
 (両区域外)
 関係市町村の意見を聴いて
 知事が指定する区域
 地方公共団体は,条例で,
 建築物の敷地又は構造に関して
 必要な制限を定めることができる。
 準景観地区  市町村は,条例で,必要な制限※を
 定めることができる。
 上記以外の区域        ―

市町村は両区域外に準景観地区を定めることができ,準景観地区でも,市町村は,必要と認めるときは,条例で,建築物の高さの最高限度・最低限度,壁面の位置の制限,建築物の敷地面積の最低限度のうち必要な制限を定めることができますが,用途制限を定めることはできません。

4.「第一種低層住居専用地域において建築することができる用途の建築物については,第二種低層住居専用地域においても建築することができる。」

【正解:

◆第一種低層住居専用地域での用途制限

 第一種低層住居専用地域での用途制限は第二種低層住居専用地域の用途制限よりも厳しいので,第一種低層住居専用地域において建築することができる用途の建築物については,第二種低層住居専用地域においても建築することができます。

第一種低層住居専用地域での用途制限は最も厳しいものになつていますが,第一種低層住居専用地域において建築することができる用途の建築物がほかの用途地域地域のすべてで建築することができるとは限らないので注意してください。(建築基準法・48条,別表第二)

 例えば,住宅〔共同住宅も含む〕・寄宿舎・下宿,図書館・博物館・老人ホーム等は第一種低層住居専用地域で建築することができますが,工業専用地域では建築することができません。

 また,幼稚園・小学校・中学校・高等学校は第一種低層住居専用地域で建築することができますが,工業地域・工業専用地域では建築することができません。

●第二種低層住居専用地域で建築できるもの
 「用途に供する部分の床面積」や「居住部分の面積割合」などにより,第二種低層住居専用地域では建築できても,第一種低層住居専用地域では建築できないものがあります。

 以下の用途に供する部分が2階以下で,かつ,用途に供する部分の床面積が150平方メートル以下であるもの,またはその建築物に付属するもの (政令で定めるものを除く。)

一  日用品の販売を主たる目的とする店舗又は食堂若しくは喫茶店

二  理髪店、美容院、クリーニング取次店、質屋、貸衣装屋、貸本屋その他これらに類するサービス業を営む店舗

三  洋服店、畳屋、建具屋、自転車店、家庭電気器具店その他これらに類するサービス業を営む店舗で作業場の床面積の合計が五十平方メートル以内のもの(原動機を使用する場合にあつては、その出力の合計が〇・七五キロワット以下のものに限る。)

四  自家販売のために食品製造業を営むパン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋その他これらに類するもので作業場の床面積の合計が五十平方メートル以内のもの(原動機を使用する場合にあつては、その出力の合計が〇・七五キロワット以下のものに限る。)

五  学習塾、華道教室、囲碁教室その他これらに類する施設

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→ 兼用住宅で,延べ面積の1/2以上を居住の用に供し,かつ,用途に供する部分の床面積の合計が50平方メートル以内であれば,上記のもの事務所(汚物運搬用自動車,危険物運搬用自動車その他これらに類する自動車で国土交通大臣の指定するもののための駐車施設を同一敷地内に設けて業務を運営するものを除く。 ),アトリエなどは第一種低層住居専用地域においても建築することができます。(施行令・130条の3)

【豆知識】<建築許可>

 各用途地域において用途規制で本来建築できない建築物でも、特定行政庁が公益上やむをえないと認め、あらかじめ利害関係を有する者の出頭を求めて公開による意見の聴取を行い、かつ建築審査会の同意を得た上で、特定行政庁の許可があれば、建築することは可能(改築、増築、移転では意見の聴取および建築審査会の同意は不要)です。(許可の要件については、公益上のほかには、良好な住居環境を害する恐れがない、商業の利便を害する恐れがない、安全上防火上の危険の度衛生上の有害の度が低い、工業の利便を害する恐れがないなど各用途地域に応じて異なるものもあります)


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