法令上の制限 実戦篇

建築基準法の過去問アーカイブス 平成6年・問22 敷地と道路


建築物の敷地又は建築物と道路の関係に関する次の記述のうち,建築基準法の規定によれば,正しいものはどれか。(平成6年・問22)

1.「建築物の敷地は,原則として幅員4m以上の道路に接しなければならないが,この幅員については,地方の特殊性等により加重されることはない。」

2.「建築物は,地下に設けるものであっても,道路に突き出して建築してはならない。

3.「私道の所有者が私道を廃止し,又は変更する場合,その私道に接する敷地に与える影響のいかんによっては,特定行政庁から,その廃止又は変更を禁止し,又は制限されることがある。」

4.「建築基準法の規定が適用された際現に建築物が立ち並んでいる幅員4m未満の道で,特定行政庁が指定したものについては,同法の規定が適用された際の道路の境界線が,その道路の境界線とみなされる。」

【正解】

× × ×

1.「建築物の敷地は,原則として幅員4m以上の道路に接しなければならないが,この幅員については,地方の特殊性等により加重されることはない。」

【正解:×

◆地方の特殊性や土地の状況によって道路の幅員は加重される

 都市計画区域または準都市計画区域内における建築物の敷地は,道路(自動車のみの交通の用に供する道路や特定高架道路等で地区計画の区域内の一定のものを除く。)に2メートル以上接しなければなりません。(建築基準法・43条1項)

 この規定での道路は,2項道路(幅員4m未満)を除いて原則として幅員は4m以上の道路ですが,特定行政庁がその地方の気候若しくは風土の特殊性又は土地の状況により必要と認めて都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内においては6mになっています。(建築基準法・42条1項)

 したがって,<この幅員については,地方の特殊性等により加重されることはない>とする本肢は誤りです。

2.「建築物は,地下に設けるものであっても,道路に突き出して建築してはならない。

【正解:×昭和59年・問22・肢4,(例外)平成6年・問22・肢2,平成8年・問25・肢3,平成12年・問24・肢4,

◆道路内の建築制限の例外−地下に設けるもの

 都市計画区域及び準都市計画区域内においては,『建築物』又は『敷地を造成するための擁壁』は,原則として,道路内に,又は道路に突き出して,建築・築造してはいけません。(建築基準法・44条1項)

  自動車のみの交通の用に供する道路
 接道義務での道路  含まれない。
 道路内の建築制限での道路  含む。

 しかし,これには例外があり,「地盤面下に設ける建築物」(平成6年・12年)や「公衆便所、巡査派出所その他これらに類する公益上必要な建築物で特定行政庁が通行上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの」(平成8年)は,道路内でも建築することができます。(建築基準法・44条1項但書)

●建築基準法・44条
(道路内の建築制限)
第44条  建築物又は敷地を造成するための擁壁は、道路内に、又は道路に突き出して建築し、又は築造してはならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物については、この限りでない。

一  地盤面下に設ける建築物

二  公衆便所、巡査派出所その他これらに類する公益上必要な建築物で特定行政庁が通行上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの

三  地区計画の区域内の自動車のみの交通の用に供する道路又は特定高架道路等の上空又は路面下に設ける建築物のうち、当該地区計画の内容に適合し、かつ、政令で定める基準に適合するものであつて特定行政庁が安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるもの

四  公共用歩廊その他政令で定める建築物で特定行政庁が安全上、防火上及び衛生上他の建築物の利便を妨げ、その他周囲の環境を害するおそれがないと認めて許可したもの

2  特定行政庁は、前項第四号の規定による許可をする場合においては、あらかじめ、建築審査会の同意を得なければならない。

3.「私道の所有者が私道を廃止し,又は変更する場合,その私道に接する敷地に与える影響のいかんによっては,特定行政庁から,その廃止又は変更を禁止し,又は制限されることがある。」

【正解:昭和58年・問22・肢2,平成6年・問22・肢3,

◆私道の廃止・変更の制限

 私道の変更や廃止によって,位置指定道路に面していた敷地では建築物の建替ができなくなったり,接道義務が果たせなくなったりするため,特定行政庁は私道の変更・廃止によって接道義務等に抵触することとなる場合には,私道の変更・廃止を禁止または制限することができます。(建築基準法・45条1項)

位置指定道路

 私道で幅員4m以上あり,かつ一定の技術的水準に適合するもので,特定行政庁からその位置の指定を受けたものを位置指定道路といいます。

●建築基準法・45条1項
(私道の変更又は廃止の制限)
第45条  私道の変更又は廃止によつて、その道路に接する敷地が第43条第1項の規定〔接道義務〕又は同条第2項の規定に基く条例の規定〔敷地と建築物の関係についての制限〕に抵触することとなる場合においては、特定行政庁は、その私道の変更又は廃止を禁止し、又は制限することができる。

4.「建築基準法の規定が適用された際現に建築物が立ち並んでいる幅員4m未満の道で,特定行政庁が指定したものについては,同法の規定が適用された際の道路の境界線が,その道路の境界線とみなされる。」

【正解:×昭和49年・肢4,昭和52年・肢3,昭和59年・問22・肢1,平成4年・問22・肢1・肢3,平成6年・問22・肢4,

◆2項道路とセットバック

 都市計画区域や準都市計画区域に指定・編入された際に,『現に建築物が立ち並んでいる道』で,4m未満のものは,特定行政庁の指定があれば道路とみなされます(2項道路)。(建築基準法42条2項,41条の2)

 この2項道路については,原則として,

 道路の中心線からの水平距離2mの線が,その道路と建築物の敷地との境界線とみなされます。

 建築物の敷地内であっても,道路の中心線から2mまでの部分は「道路」とみなされ,建築物の建築はもちろん,塀などの築造も認められません。また,建ぺい率や容積率の計算上でも,敷地面積に算入されません。

<参考>

 この2項道路の道の向い側が、建築物が並ぶような所ではなく、がけ地、河川、線路敷等の場合における敷地と道路の境界線は、道路の中心線から2mの位置ではなく向い側の道路の境界線(がけ地、河川、線路敷と道路の境界線)から4mの位置になります。

既存道路  都市計画区域や準都市計画区域に指定された際に,幅員が4m以上で
あった道路。

 ⇒特定行政庁の指定がなくても建築基準法の「道路」になる。

2項道路  都市計画区域や準都市計画区域に指定された際に,幅員が4m未満で
特定行政庁の指定があったもの

 ⇒特定行政庁の指定がないと建築基準法の「道路」にはならない。

●特定行政庁が幅員6m以上として指定した区域内
 区域指定の際,現に道路とされていた道については,幅員6m未満であっても,特定行政庁に指定されることによって道路とみなし,道路の中心線からの水平距離3mの線(特定行政庁が周囲の状況により避難及び通行の安全上支障がないと認める場合は2m)が,その道路と建築物の敷地との境界線とみなされます。

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