改正法レポート・11
 土砂災害防止法  2001.4.1施行
●土砂災害特別警戒区域
 平成10年以来、災害防止関係の出題が3年連続で続いています。今年は施行直後のため、出題されるかわかりませんが、とりあえず見ておく価値はあります。

 土砂災害防止法は今年の4月1日に施行されました。全く新規の法律ですが、
宅建業法、建築基準法、住宅金融公庫法などにも付随する法改正がありました。
(但し書 大半の基本書には掲載されていません。)

 今回は、土砂災害防止法の重要なスキームを扱い、宅建業法の改正点も復習し
ておきます。★印の付いたところが重要点です。それ以外は読み流して構いません。

<原典を見ないと気のすまない人に>

●国土交通省砂防部  http://www.mlit.go.jp/river/sabo/

    http://www.cbr.mlit.go.jp/numazu/mokuji/jigyou/sand/sand01.html

●条文および各法律の変更点

http://www.sabo.or.jp/topics/0005-0508No57zenbun.htm#1

★警戒区域と特別警戒区域の写真と画像の解説★
(→必見。ただし、時間がかかります)

http://www.pref.nagano.jp/doboku/sabo/dosyahou/dosyahou.htm

 土砂災害の定義
 条文では以下のようになっています。(第2条)

 「土砂災害」とは、

急傾斜地の崩壊傾斜度が三十度以上である土地が崩壊する自然現象をいう。)、

土石流山腹が崩壊して生じた土石等又は渓流の土石等が水と一体となって

    流下する自然現象をいう。

地滑り土地の一部が地下水等に起因して滑る自然現象又はこれに伴って移動

      する自然現象をいう。

(以下「急傾斜地の崩壊等」と総称する。)

を発生原因として国民の生命又は身体に生ずる被害をいう。

 ●土砂災害防止法の重要なスキーム
「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」

公布 平成12年5月8日

施行 平成13年4月1日

0.目的

土砂災害から国民の生命及び身体を守るため、

土砂災害が発生するおそれのある区域についての周知、

警戒避難体制の整備、

住宅等の新規立地の抑制、

既存住宅の移転促進等の対策を推進する。

1.区域の指定まで

土砂災害防止対策基本指針の作成 [国土交通大臣]

   ↓

基礎調査 [都道府県]

 区域指定等のための調査 (おおむね5年ごとに)

   ↓(関係市長村長の意見を聴いて)

土砂災害警戒区域の指定  [都道府県知事]

   ↓(関係市長村長の意見を聴いて)

土砂災害特別警戒区域の指定 [都道府県知事]

2.各区域の規制内容

●土砂災害警戒区域(イェロー・ゾーン)

土砂災害により住民の生命等に危害が生じるおそれのあると認めて知事が指定した区域

○警戒避難体制の整備

 土砂災害から生命を守るため、災害情報の伝達や避難が早くできるように

警戒避難に関する事項の住民への周知や警戒避難体制の整備。(市町村)

→ 市町村地域防災計画

●土砂災害特別警戒区域(レッド・ゾーン)

警戒区域のうち

土砂災害により建築物に損壊が生じ住民の生命等に著しい危害が生じるおそれがある

と認めて知事が指定した土地の区域

◎特定の開発行為に対する許可制 → ★特定の開発行為には許可が必要です。

 住宅宅地分譲や災害弱者関連施設(社会福祉施設、学校、医療施設)の建築のための

開発行為(特定開発行為)については、都道府県知事の許可が必要。(都道府県)

 →制限用途、特定開発行為、特定予定建築物、対策工事

◎建築物の構造規制 → ★建築確認

 居室を有する建築物は作用すると想定される土砂災害の衝撃に対して

建築物の構造が安全であるかどうか建築確認がされます。

(建築主事を置く地方公共団体)

◎建築物の移転勧告

 著しい損壊が生じるおそれのある建築物の所有者等に対し、移転等の勧告

 移転支援→勧告による移転者への融資、資金の確保。(土地の取得へのあっせん)

      

3.特別警戒区域での、特定の開発行為に対する許可制のフローチャート

特定開発行為をしようとする者は、都道府県知事に許可申請(第9条1項)

  ↓

審   査

(対策工事等の計画が土砂災害を防止するための技術的基準に従っているか)

(その申請の手続が規定に違反していないか)

  ↓

知事の許可・不許可の通知(文書)

(対策工事等の施行に伴う災害を防止するために必要な条件を付することができる)

  ↓

  ↓  ★(許可があるまでは、当該宅地の売買の広告・売買契約も禁止)

  ↓  計画に変更がある場合は、改めて知事の許可を受ける。  

  ↓  ただし、予定建築物の用途が制限用途以外の場合、または

  ↓      省令で定める軽微な変更の場合は、遅滞なく、知事に届出。

  ↓

対策工事等の完了(都道府県に届出)

  ↓

工事完了の検査

  ↓  (政令で定める技術的水準に適合)

検査済証の交付

  ↓  (公告があるまでは、制限用途の建築は禁止)

  ↓  

対策工事等の完了の公告

4.監督処分 及び 罰則 の主なもの

○監督処分の例

 都道府県知事は、次の各号のいずれかに該当する者に対して、

特定予定建築物における土砂災害を防止するために必要な限度において、

特定開発行為の許可を取り消し、

若しくはその許可に付した条件を変更し、

又は工事その他の行為の停止を命じ、

若しくは相当の期限を定めて必要な措置をとることを命ずることができる。

・違反して、特定開発行為をした者

・許可に付した条件に違反した者

・特別警戒区域で行われる又は行われた特定開発行為であって、

特定予定建築物の土砂災害を防止するために必要な措置を

政令で定める技術的基準に従って講じていないものに関する工事の

注文主若しくは請負人(請負工事の下請人を含む。)

又は請負契約によらないで自らその工事をしている者、若しくは、した者

○罰則の例

1年以下の懲役又は50万円以下の罰金

・違反して、特定開発行為をした者

・工事完了後、公告がないのに、制限用途の建築物を建築した者

・都道府県知事の監督処分の命令に違反した者

○両罰規定

法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、

その法人又は人の業務又は財産に関し、違反行為をしたときは、

行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても各本条の罰金刑を科する。

5.宅建業法の主な改正点(既述)

★特定開発行為の許可があるまでは、当該宅地の売買の広告・売買契約も禁止。

★土砂災害特別警戒区域(施行令3条1項23の2)

 宅地又は建物の賃借の契約以外の契約について(賃借契約は除くということ)

 重要事項の「法令に基づく制限で政令で定めるもの」に追加。

 (宅建業法35条1項2号)

★土砂災害警戒区域(施行規則16条4項2の1)

 宅地若しくは建物の売買、交換、賃借の契約について

 重要事項の「相手方の保護の必要性及び契約の内容の別を勘案して国土交通省令

で定めたもの」に追加。(宅建業法35条1項12号)

 気になる人に―条文の主なもの
「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」

公布 平成12年5月8日

施行 平成13年4月1日


(第1条) 

この法律は、土砂災害から国民の生命及び身体を保護するため、

土砂災害が発生するおそれがある土地の区域を明らかにし、

当該区域における警戒避難体制の整備を図るとともに、

著しい土砂災害が発生するおそれがある土地の区域において

一定の開発行為を制限するほか、

建築物の構造の規制に関する所要の措置を定めること等により、

土砂災害の防止のための対策の推進を図り、もって公共の福祉の確保に資すること

を目的とする。

◆国土交通大臣が「土砂災害の防止のための対策の推進に関する基本的な指針」

(土砂災害防止対策基本指針)を定める。

◆都道府県は、基本指針に基づき、おおむね五年ごとに、

土砂災害警戒区域及び土砂災害特別警戒区域の指定

その他この法律に基づき行われる土砂災害の防止のための対策に必要な基礎調査として、

急傾斜地の崩壊等のおそれがある土地に関する地形、地質、降水等の状況及び

土砂災害の発生のおそれがある土地の利用の状況その他の事項に関する調査

(以下「基礎調査」という。)を行うものとする。

◆都道府県は、基礎調査の結果を、国土交通省令で定めるところにより、

関係のある市町村(特別区を含む。以下同じ。)の長に通知しなければならない。

◆土砂災害警戒区域

都道府県知事は、基本指針に基づき、急傾斜地の崩壊等が発生した場合には

住民等の生命又は身体に危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域で、

当該区域における土砂災害を防止するために警戒避難体制を特に整備すべき

土地の区域として政令で定める基準に該当するものを、

土砂災害警戒区域(以下「警戒区域」という。)として指定することができる。

都道府県知事は、指定をしようとするときは、あらかじめ、

関係のある市町村の長の意見を聴かなければならない。

◆土砂災害特別警戒区域

都道府県知事は、基本指針に基づき、

警戒区域のうち、急傾斜地の崩壊等が発生した場合には

建築物に損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがある

と認められる土地の区域で、

一定の開発行為の制限及び居室を有する建築物の構造の規制をすべき土地の区域

として政令で定める基準に該当するものを、土砂災害特別警戒区域として

指定することができる。

都道府県知事は、指定をしようとするときは、あらかじめ、

関係のある市町村の長の意見を聴かなければならない。

◆特定開発行為の制限(第9条)

1.特別警戒区域内において、

都市計画法の開発行為で当該開発行為をする土地の区域内において

建築が予定されている建築物

(当該区域が特別警戒区域の内外にわたる場合においては、

 特別警戒区域外において建築が予定されている建築物を除く。)

の用途が制限用途であるもの(以下「特定開発行為」という。)をしようとする者は、

あらかじめ、都道府県知事の許可を受けなければならない。

 ただし、非常災害のために必要な応急措置として行う行為

 その他の政令で定める行為については、この限りでない。

2.制限用途とは、予定建築物の用途で、

住宅(自己の居住の用に供するものを除く。)

並びに高齢者、障害者、乳幼児その他の

特に防災上の配慮を要する者が利用する社会福祉施設、

学校及び医療施設(政令で定めるものに限る。)以外の用途でないものをいう。

◆許可の申請(第10条)

1.許可を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を提出しなければならない。

一  特定開発行為をする土地の区域(以下「開発区域」という。)の位置、区域及び規模

二  予定建築物(前条第一項の制限用途のものに限る。以下「特定予定建築物」という。)の用途

   及びその敷地の位置

三  特定予定建築物における土砂災害を防止するため自ら施行しようとする工事

   (以下「対策工事」という。)の計画

四  対策工事以外の特定開発行為に関する工事の計画

五  その他国土交通省令で定める事項

2.このほかに、国土交通省令で定める図書を添付しなければならない。

◆許可の条件(第11条)

都道府県知事は、第九条第一項の許可の申請があったときは、

前条第一項第三号及び第四号に規定する工事(以下「対策工事等」という。)の計画が、

特定予定建築物における土砂災害を防止するために必要な措置を

政令で定める技術的基準に従い講じたものであり、

かつ、

その申請の手続がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反していない

と認めるときは、その許可をしなければならない

◆許可に必要な条件(第12条)

都道府県知事は、第九条第一項の許可に、

対策工事等の施行に伴う災害を防止するために必要な条件を付することができる。

◆許可の特例(第14条)

国又は地方公共団体が行う特定開発行為については、

国又は地方公共団体と都道府県知事との協議が成立することをもって

第九条第一項の許可を受けたものとみなす。

◆許可又は不許可の通知(第15条)

都道府県知事は、許可の申請があったときは、遅滞なく、

許可又は不許可の処分をしなければならない。

この処分をするには、文書をもって当該申請をした者に通知しなければならない。

◆変更の許可等 (16条)

第九条第一項の許可(この項の規定による許可を含む。)を受けた者は、

次の事項の変更をしようとする場合においては、都道府県知事の許可を受けなければならない。

・特定開発行為をする土地の区域の位置、区域及び規模

・特定予定建築物の用途及びその敷地の位置

・特定予定建築物における土砂災害を防止するため自ら施行しようとする工事の計画

・対策工事以外の特定開発行為に関する工事の計画

(ただし、変更後の予定建築物の用途が第九条第一項の制限用途以外のものであるとき、

又は国土交通省令で定める軽微な変更をしようとするときは、この限りでない。

この変更をしたときは、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。)

◆工事完了の検査等

当該許可に係る対策工事等のすべてを完了したときは都道府県に届出

当該対策工事等が政令で定める技術的基準に適合しているかどうかについて検査

その検査の結果

当該対策工事等が当該政令で定める技術的基準に適合していると認めたときは、

国土交通省令で定める様式の検査済証を当該届出をした者に交付しなければならない。

都道府県知事は、当該対策工事等が完了した旨を公告

◆建築制限

第九条第一項の許可を受けた開発区域(特別警戒区域内のものに限る。)内の土地

においては、前条第三項に規定する公告があるまでの間は、

第九条第一項の制限用途の建築物を建築してはならない。

◆特別警戒区域内における居室を有する建築物の構造耐力に関する基準

特別警戒区域における土砂災害の発生を防止するため、

建築基準法第二十条に基づく政令においては、

居室を有する建築物の構造が当該土砂災害の発生原因となる自然現象により

建築物に作用すると想定される衝撃に対して安全なものとなるよう

建築物の構造耐力に関する基準を定めるものとする

◆監督処分

都道府県知事は、次の各号のいずれかに該当する者に対して、

特定予定建築物における土砂災害を防止するために必要な限度において、

第九条第一項若しくは第十六条第一項の許可を取り消し、

若しくはその許可に付した条件を変更し、

又は工事その他の行為の停止を命じ、

若しくは相当の期限を定めて必要な措置をとることを命ずることができる。

・違反して、特定開発行為をした者

・許可に付した条件に違反した者

・特別警戒区域で行われる又は行われた特定開発行為

(当該特別警戒区域の指定の際当該特別警戒区域内において既に着手している行為を除く。)

であって、特定予定建築物の土砂災害を防止するために必要な措置を

第十一条に規定する政令で定める技術的基準に従って講じていないものに

関する工事の注文主若しくは請負人(請負工事の下請人を含む。)

又は請負契約によらないで自らその工事をしている者若しくはした者

立入検査・報告の徴収等

◆移転の勧告

都道府県知事は、

急傾斜地の崩壊等が発生した場合には特別警戒区域内に存する居室を有する建築物に損壊が生じ、

住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれが大きいと認めるときは、

当該建築物の所有者、管理者又は占有者に対し、

当該建築物の移転その他土砂災害を防止し、又は軽減するために必要な措置をとることを

勧告することができる。

必要があると認めるときは、その勧告を受けた者に対し、

土地の取得についてのあっせんその他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない

◆緊急時の指示

国土交通大臣は、

土砂災害が発生し、又は発生するおそれがあると認められる場合において、

土砂災害を防止し、又は軽減するため緊急の必要があると認められるときは、

都道府県知事に対し、

この法律の規定により都道府県知事が行う事務のうち政令で定めるものに関し、

必要な指示をすることができる

◆罰則

一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金

・違反して、特定開発行為をした者

・工事完了後、公告がないのに、制限用途の建築物を建築した者

・都道府県知事の監督処分の命令に違反した者

六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金

・調査に際し、土地の立入り又は一時使用を拒み、又は妨げた者

・立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した者

二十万円以下の罰金

報告又は資料の提出を求められて、報告若しくは資料を提出せず、

又は虚偽の報告若しくは資料の提出をした者


◆両罰規定

法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、

その法人又は人の業務又は財産に関し、前三条の違反行為をしたときは、

行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても各本条の罰金刑を科する。


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