税法その他 実戦篇

不動産鑑定評価基準の過去問アーカイブス 昭和44年 正常賃料


不動産の正常賃料に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和44年)

1.「正常賃料は,契約にあたって授受される一時金を考慮せずに求めることはできない。」

2.「正常賃料は,借主の企業の収益性によって定められる。」

3.「賃料には賃貸に伴う危険負担が織り込まれているので,賃借人が定まらなければ正常賃料の評定はできない。」

4.「不動産の正常価格が同じであれば,その正常賃料も等しい。」

【正解】

× × ×

【正解:

◆正常賃料

 正常賃料とは,正常価格と同一の市場概念〔合理的自由市場〕の下において,新たな賃貸借契約等で成立するであろう経済価値を表示する適正な賃料(新規賃料)をいいます。

1.一時金を考慮せずに賃料を求めることはできないので正しい記述です。(実質賃料では,一時金が授受される場合には,当該一時金の運用益及び償却額,預り金の性格をもつ一時金の運用益が含まれる。)

2.正常賃料は,特定の借主の事情−収益性等−によって変わるわけではないので×

3.賃料には確かに賃貸に伴う危険負担が織り込まれますが,借主によって変動する金額を織り込むのではなく,標準的に算定可能なものを織り込むので,賃借人が具体的に定まらなければ正常賃料の評定はできないということにはなりません。

4.たとえ正常価格が同じであっても,個々の賃貸物件によって必要諸経費が異なるため,正常賃料も同じとは限りません。

●実質賃料と支払賃料

  実質賃料=賃料の種類の如何を問わず貸主に支払われる賃料の算定の期間に対応する適正なすべての経済的対価をいう。

 ∴実質賃料=「純賃料」+「必要諸経費等」

  (一時金の授受のあるときは,
   実質賃料=支払賃料+「一時金の運用益及び償却額」)

不動産の賃貸借等に当たってその賃料に含まれる必要諸経費等としては、次のものがあげられる。

ア 減価償却費
イ 維持管理費(維持費、管理費、修繕費等)
ウ 公租公課(固定資産税、都市計画税等)
エ 損害保険料(火災、機械、ボイラー等の各種保険)
オ 貸倒れ準備費
カ 空室等による損失相当額

 支払賃料各支払時期に支払われる賃料をいい,契約に当たって,権利金,敷金,保証金等の一時金が授受される場合には,実質賃料から,当該一時金の運用益及び償却額,預り金の性格をもつ一時金の運用益を控除して求める。

 ∴支払賃料=「各支払時期に支払われる賃料

  (一時金の授受のあるときは,
   支払賃料=実質賃料−「一時金の運用益及び償却額」)

不動産の賃料を求める鑑定評価の手法には,新規賃料では,積算法,賃貸事例比較法,収益分析法等があり,継続賃料では,差額配分法,利回り法,スライド法,賃貸事例比較法等があります。

●正常賃料,継続賃料,限定賃料
 II 賃料

不動産の鑑定評価によって求める賃料は、一般的には正常賃料又は継続賃料であるが、鑑定評価の依頼目的及び条件に応じて限定賃料を求めることができる場合があるので、依頼目的及び条件に即してこれを適切に判断し、明確にすべきである。

1.正常賃料

正常賃料とは、正常価格と同一の市場概念の下において新たな賃貸借等(賃借権若しくは地上権又は地役権に基づき、不動産を使用し、又は収益することをいう。)の契約において成立するであろう経済価値を表示する適正な賃料(新規賃料)をいう。

2.限定賃料

限定賃料とは、限定価格と同一の市場概念の下において新たな賃貸借等の契約において成立するであろう経済価値を適正に表示する賃料(新規賃料)をいう。

限定賃料を求めることができる場合を例示すれば、次のとおりである。

(1)隣接不動産の併合使用を前提とする賃貸借等に関連する場合

(2)経済合理性に反する不動産の分割使用を前提とする賃貸借等に関連する場合

3.継続賃料

継続賃料とは、不動産の賃貸借等の継続に係る特定の当事者間において成立するであろう経済価値を適正に表示する賃料をいう。

(総論・第5章 鑑定評価の基本的事項 第3節 鑑定評価によって求める価格又は賃料の種類の確定)

   価格を求める手法  新規賃料を求める手法
 原価方式  原価法  積算法
 比較方式  取引事例比較法  賃貸事例比較法
 収益方式  収益還元法  収益分析法

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