Brush Up! 権利の変動篇
不動産登記の過去問アーカイブス 合筆・分筆・建物の合併・分割
改正対応 平成6年・問15
不動産の登記に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成6年・問15) |
1.「所有権の登記のある土地について合筆の登記を申請する場合,申請情報と併せて提供すべき登記識別情報は,合筆前の土地のいずれか1筆のもので足りる。」 |
2.「抵当権設定の登記のある土地の分筆の登記を申請する場合,抵当権者の分筆に関する承諾を証する情報又はその者に対抗することができる裁判があったことを証する情報を,申請情報と併せて提供しなければならない。」 |
3.「抵当権設定の登記のある2個の建物については,その抵当権設定登記の登記原因,その日付,登記の目的及び受付番号が同じであっても,合併の登記をすることができない。」 |
4.「建物の分割の登記は,表題部に記載した所有者又は所有権の登記名義人の申請によるほか,登記官が職権ですることもできる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | × | × |
1.「所有権の登記のある土地について合筆の登記を申請する場合,申請情報と併せて提供すべき登記識別情報は,合筆前の土地のいずれか1筆のもので足りる。」(類・平成2年・問15,平成10年・問14) |
【正解:○】 ◆合筆 「合筆の登記」とは,登記名義を同一とする,隣接した数筆の土地を合わせて,新たに1筆の土地を創設するものであり,登記上の1筆の土地の一個性の内容が変更されるいわば形式的な処分の登記です。 したがって,合筆前の土地の所有権の登記名義人であることを形式的に確認するだけですから,合併前のいずれか一筆の土地の所有権の登記名義人の登記識別情報を提供すればOKです(不動産登記法22条,登記令8条1項1号,2項)。 |
2.「抵当権設定の登記のある土地の分筆の登記を申請する場合,抵当権者の分筆に関する承諾を証する情報又はその者に対抗することができる裁判があったことを証する情報を,申請情報と併せて提供しなければならない。」 |
【正解:×】 ◆抵当権設定登記のある土地の分筆 抵当権設定の登記のある土地の分筆の登記を申請する場合(分筆後の土地の全てに抵当権が存続するものとする。),抵当権者の承諾書やその者に対抗することができる裁判があったことを証する情報を申請情報に併せて提供する必要はありません。 抵当権の登記がされている土地の分筆の登記がされると,その抵当権は分筆後の土地それぞれに及んで,分割後の数筆の土地が同一の債権を担保することになり,共同担保関係が生じます。 ▼分筆の登記で,添付情報として,抵当権者の承諾を証する情報(抵当権の登記名義人が抵当権を消滅させることを承諾したことを証する当該登記名義人が作成した情報)又は当該登記名義人に対抗することができる裁判があったことを証する情報を提供するのは分筆された土地の一筆ないし数筆について抵当権が存続しないで消滅する場合です。(不動産登記法・40条,登記規則・104条1項)
註 : 抵当権者の承諾を証する情報 抵当権の登記名義人が抵当権を消滅させることを承諾したことを証する当該登記名義人が作成した情報 |
3.「抵当権設定の登記のある2個の建物については,その抵当権設定登記の登記原因,その日付,登記の目的及び受付番号が同じであっても,合併の登記をすることができない。」 |
【正解:×】 ◆抵当権のある建物の合併−原則としてはできないが
「所有権の登記」以外の「権利に関する登記」のある建物については,原則として合併登記はできません。(本肢では,抵当権が設定されているので,本来ならば合併はできない。) しかし,例外的に,その抵当権設定登記の登記原因,その日付,登記の目的及び受付番号が同じであれば,合併後の建物を目的とする一個の担保物権等にしても不都合にはならないため,合併の登記をすることができます。(不動産登記規則・131条) ▼抵当権設定のある複数の土地の合筆についても同じことが言えます。(不動産登記規則・105条2号) ▼「所有権の登記」以外の「権利に関する登記」のある土地どうしの合筆は原則としてできませんが(不動産登記法・41条6号),承役地についてする地役権の登記がある場合(不動産登記規則・105条1号)や,担保権設定登記の登記原因,その日付,登記の目的及び受付番号が同一のものが登記されている場合であれば,合筆の登記をすることができます(不動産登記規則・105条2号)。 |
●建物の合併の登記の制限 (不動産登記法・56条) ・表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に異なる建物の合併の登記はすることができない。(法56条2号) ・表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に持分を異にする建物の合併の登記はすることができない。(法56条3号) ・所有権の登記以外の権利に関する登記がある建物は合併できない。(法56条5号) ・所有権の登記のない建物と所有権の登記のある建物の合併はできない。(同・4号) ・合併しようとする建物が主たる建物と附属建物の関係にないときは、合併の登記をすることができない。(準則・86条(1)) |
●附属合併 |
(建物に物理的な変更を加えることなく)別個の建物として登記されている2個以上の建物を登記記録上で1個の建物とする登記手続のことをいう。
※合併により,特定の1棟の建物を主たる建物とし,それ以外は附属建物として記載。 合併によって建物Bを建物Aの付属建物とする場合は,建物Aの登記記録中の表題部の附属建物欄に建物Bは記載されることになり,それまでの建物Bの登記記録は閉鎖されます。 |
●準則78条1項 〜建物の個数の基準〜 |
効用上一体として利用される状況にある数棟の建物は,所有者の意思に反しない限り,一個の建物と扱うものとする。
→ 一登記記録に『主たる建物』と『その附属建物』として記載するということを意味する。 |
●参考問題 |
1.「所有者が同一人である接続した2筆のそれぞれの土地について、抵当権設定の登記がされている場合であっても、それが同一の債権を担保するためのものであるときには、その合筆の登記を申請することができる。」昭和54 |
【正解:×】 本問はヒッカケ問題です。 上の問題で見たように、原則として、抵当権設定の登記のある複数の土地について、合筆の登記はできませんが(不動産登記法・41条6項)、例外的に、その抵当権設定登記の登記原因、その日付、登記の目的及び受付番号が同じであれば、合筆の登記をすることができました(不動産登記規則・105条2号)。 しかし、本問での「同一の債権を担保するためのものであるとき」という表現だけでは、上記すべてを満たしているとは言えないため、×になります。 ▼合筆のできない場合として知っておく必要のあるものとして、このほかに、「所有権の登記がない土地と所有権の登記がある土地との合併はできない」(不動産登記法・41条5項)という条文があります。 |
4.「建物の分割の登記は,表題部に記載した所有者又は所有権の登記名義人の申請によるほか,登記官が職権ですることもできる。」 |
【正解:×】 ◆建物の分割の登記は職権ではできない 不動産の表示に関する登記は,登記官が職権でもでき(不動産登記法・28条,登記規則96条),また「土地」の分筆や合筆の場合も,土地の「表題部所有者」又は「所有権の登記名義人」の異議がなければ,地図作成の便宜上のために,職権でもできます(不動産登記法・39条3項,14条1項)。 しかし,「建物」の分割・区分・合併の登記の場合は,あくまでも建物所有者(表題部所有者・所有権の登記名義人)の意思によってなされるべきものであり,職権ではできません(不動産登記法・54条1項)。 |
●建物の分割 |
建物の分割の登記とは,建物Aの附属建物として登記されている建物を,A建物とは別個の独立した建物として分離する登記のことをいい,分離した建物には,それまで附属建物として記載されていた登記記録とは別の一登記記録が新たに設けられ,それに記録されます。(不動産登記法・54条1項)
※土地の分筆に似ています。 |